アトピー咳嗽(がいそう)

長引く咳の原因として、咳喘息とともに多いとされているのがアトピー咳嗽です。
アトピー咳嗽は、痰の出ないコンコンといった乾いた咳が特徴で、咽頭の掻痒感も多くみられます。
アトピー素因といって、生まれつきアレルギー反応を起こしやすい人がこの疾患に罹りやすく、また、アトピー性皮膚炎を起こしたことがあったり、家族にアレルギー体質の人がいる場合もこの疾患に罹りやすいと言われています。

 

 アトピー咳嗽の特徴

アトピー咳嗽の特徴として目立つのは発現する時間帯で、夜~朝にかけての咳が多いとされています。
また、アトピー咳嗽は咳喘息と見分けるのが難しい疾患なのですが、咳喘息で有効な気管支拡張薬では効果がありません。そこで、気管支拡張薬を処方して、無効であることを確かめる診断的治療に利用することもあります。

 主な特徴

8週間以上続く、喉のイガイガ感・掻痒感を伴う、痰の出ない乾いた咳
ヒューヒュー・ゼーゼーなどの呼吸音や呼吸困難を認めない
咳は、就寝時→深夜から早朝→起床時→早朝の順に多い
咳は、エアコン、煙草の煙、会話(電話)、運動、精神的緊張など、様々な誘発因子がある
アトピー素因がある・アレルギー体質である・家族にアレルギー体質の人がいる
胸部レントゲン検査で異常がない・呼吸機能検査で異常がない
気管支拡張薬、鎮咳薬、抗菌薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が無効

 

 アトピー咳嗽の診断基準

上記の特徴と重なるところがありますが、診断基準があります。

 アトピー咳嗽の診断基準

1 喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が3週間以上持続
2 気管支拡張薬が無効
3 アトピー素因を示唆する所見または誘発喀痰中好酸球増加の1つ以上を認める
4 ヒスタミンH₁受容体拮抗薬または/およびステロイド薬にて咳嗽発作が消失

上の1~4の項目に全て当てはまったときに、アトピー咳嗽と診断されます。
3のアトピー素因を示唆する所見とは以下の5つです。

1) 喘息以外のアレルギー疾患の既往あるいは合併
2) 末梢血好酸球増加
3) 血清総IgE値の上昇
4) 特異的IgE抗体陽性
5) アレルゲン皮内テスト陽性

 

 アトピー咳嗽の治療

アトピー咳嗽の治療は、基本的には内服治療が行われます。
ヒスタミンH₁受容体拮抗薬という薬・ステロイド薬が有効です。
通常ははじめにヒスタミンH₁受容体拮抗薬が処方されて、その有効率は60%だと言われています。これが効果不十分な場合には、吸入ステロイドを追加します。咳が強くて吸入出来ない場合などにはステロイド薬の飲み薬を1~2週間内服します。

 ヒスタミンH₁受容体拮抗薬

アレルギーの発症にはヒスタミンという体内物質が関与しています。この薬は、ヒスタミンの受容体をブロックし、その働きを抑えることでアレルギー症状を緩和します。

 吸入ステロイド薬

ステロイドには優れた抗炎症作用があります。吸入剤として使用するタイプでは、炎症を起こしている気道局所に作用します。吸入の回収や方法などは、お薬によって変わりますので、説明を受けた回数や使用方法を守って使いましょう。

 経口ステロイド薬

アトピー咳嗽の治療で経口ステロイド薬を使うことはほとんどありませんが、吸入ステロイド薬の使用が難しい場合や、重症の場合には、一時的に使用することがあります。

 

 治療と経過

アトピー咳嗽は悪化して喘息を発症したり、慢性閉塞肺疾患(COPD)などに移行することはありません。咳が軽快すれば、治療を終了することができます。
しかし、治療終了後約4年間経過すると、約50%の人が再発してしまうというデータもあります。この場合、同じ治療で軽快します。

 

アトピー咳嗽 

 

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