慢性閉塞性肺疾患(COPD)

長引く咳の原因のひとつに慢性閉塞性肺疾患(COPD)があります。
2~3週間以上(数年以上)続く咳で、咳に伴って痰がでるのが特徴ですが、空咳(痰がでない)の場合もあります。
煙草が大きな原因とされていて、階段で息切れがしたり、運動をすると息が続かないなどの症状が出ます。

 

 慢性閉塞性肺疾患とは

以前は「肺気腫」「慢性気管支炎」と呼ばれていたものを統一した総称が慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。
Chronic(慢性)Obstructive(閉塞性)Pulmonary(肺)Disease(疾患)の頭文字をとってCOPDといいます。
煙草などの有害物質を長期に吸入することで肺の中の気管支に炎症が起き、空気の流れが低下することによって咳や痰がでたり、呼吸困難などが起こったりする疾患です。

 

 原因

PM2.5などによる大気汚染や遺伝的要因もありますが、最大の原因は喫煙によるものです。喫煙者の15~20%でCOPDを発症し、COPD患者のうち90%は喫煙歴があると言われています。

有害な粒子やガスを吸入すると、肺で炎症を起こします。

気管支で炎症を起こすと、破壊された細胞を修復しようとして新たに上皮細胞が形成されます。この破壊と修復を繰り返すことによって気管支壁が厚くなり気道が狭くなります。

また、煙草などの有害物質は非常に小さいので気管支の一番奥にある肺胞まで到達し、肺胞が破壊されて「肺気腫」という状態になります。肺胞は酸素や二酸化炭素の交換の場であるため、肺気腫の状態になると当然その機能が低下し、呼吸をする機能も低下してしまいます。

COPDでは、主に中枢気道に炎症を起こす「気道病変優位型(慢性気管支炎型)」と、主に肺胞の破壊による「気腫優位型(肺気腫)」に分類されますが、どちらも混在すると考えられていて、これは治療しても元に戻ることはありません

 

 COPDの特徴

 主な特徴

長引く慢性的な咳や痰
階段や坂道で息切れや呼吸困難になる
呼吸がしずらく、口をすぼめて息をする
ヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸音がする(1日内でも変化する)
風邪をひかやすい
風邪が治りにくい

 合併症

COPDは肺の病変ですが、全身に様々な病気を引き起こす可能性があります。
COPDに合併しやすい病気としては、糖尿病・心臓病(心不全)・骨粗鬆症・抑うつ・筋力低下・消化性潰瘍などがあります。
また、肺癌になる可能性も高いと考えられています。

 

 COPDの検査と診断

長期にわたる喫煙歴があって、慢性的な咳・痰・労作時の呼吸困難があればCOPDを強く疑います。
症状に対する問診を行い、呼吸機能検査や胸部レントゲン検査、胸部CTスキャン検査などから診断することになります。
また、COPDに似た症状がでる疾患ではないか、または合併していないかを鑑別することも重要です。

 COPDに似た症状がでる疾患

気管支喘息
びまん性汎細気管支
副鼻腔気管支症候群
閉塞性細気管支炎
気管支拡張症
肺結核
じん肺症
リンパ脈管筋腫症
うっ血性心不全
間質性肺疾患
肺癌

 

 呼吸機能検査

スパイロメーターという機器を使って肺にどれだけ多くの空気を吸い込めるか、どれだけ大量に素早く吐き出せるかを調べます。
COPDの診断では、最初の1秒間で吐き出せた量(1秒量)を、思い切り吐き出した息の全体量(努力肺活量)で割って1秒率を計算し、この値が70%未満だとCOPDを強く疑います。

 画像検査(レントゲン・CTスキャン)

ct胸部レントゲンでCOPDの所見がみられるのは、病気がかなり進行してからなので早期発見は難しいといわれています。
CT検査では、肺胞の破壊がわかり、早期の気腫病変の発見ができます。
レントゲン検査やCT検査は、他の病気との鑑別や合併症などがないかを調べる意味もあります。

 その他

COPDでは心臓に負担がかかることが多く、虚血性心疾患などの合併がみられるので、心電図検査や超音波検査なども行われます。
また、似ている疾患と見分けるために血液検査をする場合もあります。

 

 COPDの治療

COPDで肺胞が壊れたり、細気管支に炎症を起こして気管が狭くなったりすると肺機能の低下をきたします。一度破壊された肺胞や変化を起こした気管を元に戻すことはできません。
しかしながら、治療を続けることで症状を和らげたり、病状の進行を抑制することはできますので、早期発見早期治療がとても大切です。

 禁煙

治療の基本は禁煙です。
喫煙を続けると呼吸機能の低下が加速してしまうだけでなく、急性憎悪といって、命にかかわりかねない状態になってしまうこともあります。
現在は禁煙するための治療は健康保険の適応になっています。→→禁煙外来について←←

 薬物療法

薬物療法の中心は気管支拡張薬です。抗コリン薬、β₂刺激薬、テオフィリン薬などです。効果的で副作用も少ないことから吸入薬が推奨されています。気流閉塞が重症で憎悪を繰り返すときは吸入ステロイド薬を使用する場合もあります。

 予防接種

インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンがあります。急性憎悪の原因にインフルエンザや肺炎があるからで、これらの摂取が勧められています。

 呼吸リハビリテーション

腹式呼吸や口すぼめ呼吸などの呼吸訓練や筋肉トレーニングを行い、呼吸を楽にし、生活の質(QOL)の向上を目指します。

 在宅酸素療法

COPDでは肺のガス交換の働きが低下し、血液中の酸素が不足した状態(呼吸不全)になることがあります。その不足した酸素を補うために酸素を吸入します。
自宅での酸素吸入には「酸素供給装置」を使用します。外出時には携帯用酸素ボンベを使用したりします。

 

 COPDについて重要なこと

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は長年の喫煙習慣が主な原因となる肺の生活習慣病とも言える病気で、70歳以上の6人に1人はCOPDと言われるほどよくある病気です。
煙草を吸っている人はCOPDのハイリスク群です。COPDは一度かかってしまったら治らない病気ですが、早期発見・早期治療をすることによって、症状を和らげたり進行を遅らせることができます。
症状がなくても、現在、煙草を吸っている方には、できるだけ早期に禁煙することをお勧めします。

 

慢性閉塞性肺疾患 COPD 

 

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