熱中症に気をつけて

熱中症が起こる仕組み

人の体には体温を調節するシステムがあります。このシステムは、体の深部体温を常に37℃程度に保とうとするいわばサーモスタットのような働きをしています。
運動や気温によって体温が上昇したことを脳が認識します。すると脳は上昇し過ぎた体温を下げるために、①血管を太くして血液を皮膚付近に集め、熱伝導によって体温を下げたり、②血液中の水分を汗として出して気化熱で体温を下げるように指令を出します。
このようなシステムで体温を37℃付近でキープしています。
ところが、このシステムにも限界があり、体温の上昇がこの機能の能力を超えてしまうと、体温が上昇し過ぎて熱中症を発症してしまうのです。

熱中症 運動

運動によって
体温が上昇
矢印 熱中症 脳
脳が暑さを感じとって、体温を37℃に保つよう指示を出す
矢印 熱中症 血管
脳からの指令で血管が太くなり、皮膚に血液が集まって熱伝導により体温を下げる
熱中症 気温
皮膚の温度センサーで
熱を感じる
矢印 矢印 熱中症 汗血液中の水分が汗腺から汗として出るときの気化熱で体温を下げる

 

熱中症の症状は?

熱中症はどんな年代の人にも起こり得るものです。統計で多いとされるのは10代~20代で、炎天下での運動によるものと思われます。次に多いのは70代~80代で、暑さを感じる能力と熱を下げる能力(体温調節システム)の衰えが原因と言われます。
熱中症は症状の重症度によって3つに分けられます。若い人はⅠ~Ⅱ度の比較的軽症が多いのですが、高齢者になるとⅢ度と重症化してしまうケースが多くなります。

熱中症の重症度の分類

分類 症状
Ⅰ度(軽度) めまい・熱失神
「たちくらみ」といわれるような状態で、脳への血流が瞬間的に不足することでおこります。運動をやめた直後の起こることが多いとされています。脈が速くて弱くなり、顔面蒼白、呼吸回数の増加、唇のしびれなどもみられます。

筋肉痛・筋肉の硬直
筋肉の「こむらがえり」のことで、痛みを伴います。発汗に伴う塩分(ナトリウム等)の欠乏によって生じます。熱痙攣と呼ぶこともあります。(全身の痙攣はこの段階ではみられません)
 
Ⅱ度(中等度) 頭痛・吐き気・嘔吐・下痢・倦怠感・虚脱感・失神・気分の不快・集中力の低下
従来の「熱疲労」にあたります。体がぐったりする・力が入らないなどがあり、自分の生年月日が言えないことや現在の場所や状況が分からないこともあります。放置したり、誤った対応をすると重症化してⅢ度に移行する危険性があります。

Ⅲ度(重度) 意識障害・痙攣発作・手足の運動障害・おかしな言動や言動・過呼吸・ショック症状
呼びかけや刺激などに対する反応がおかしい、体にガクガクとしたひきつけがあるなど、脳・筋肉や肝・腎臓・血液などにも影響が出ます。

高体温
体に触ると熱いという感触があります。39℃以上の高熱になることもあります。

意識がないなど、Ⅲ度の症状がみられた場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。放置すると命にかかわることになりかねません。
Ⅱ度の症状でも応急処置だけではなかなか回復しないことが多く、やはり医療機関への受診を考慮しながら対応しないといけません。
Ⅲ度の重症は高齢者に多くみられます。家族や周りの方が気を付けてあげなければなりません。

熱中症の重症度分類は、必ずどれかに当てはまるものではないということも知っておいてください。あくまでも目安として作成されたもので、その人個人や環境や状況で変わっていくのが熱中症の症状です。
また、数分前には軽症だった人が急に意識障害をおこして重症化することも十分にあり得ます。特に体力のない方や子供やお年寄りのばあいは、症状がなくなるまで誰かか付き添い、悪化するようなら医療機関を受診してください。

 

熱中症の応急処置

熱中症は高温多湿で日差しが強い日によく起こるとされています。また、梅雨明けの蒸し暑いときなど、身体が暑さに慣れていないときなどは、さほど気温が高くなくても発症することがあります。では、熱中症になってしまったときの応急処置はどうしたらいいのでしょうか。

涼しい場所に移動させる
熱中症にかかってしまった人がいる場合は、まずは暑い場所から移動させてあげることが必要です。エアコンのある室内や車の中、屋外であれば、木陰や日陰で風の通る場所がいいでしょう。そして出来る範囲で構いませんので、風を通すために衣服を緩め、頭を低くして寝かせます。

体温を下げる努力を
上昇してしまった体温を下げるため、氷のうや保冷材などで、首・わき・ももの付け根などの血管が多く通っているところを冷やします。体に水をかけたり、うちわなどで扇いで風を起こしてあげるのも効果的です。

水分と塩分の補給
意識があって吐き気などがない場合には水分と塩分を補給します。水分だけでは血液中のナトリウム濃度が下がってしまうので、塩分も一緒に補給します。吸収効率のいいスポーツドリンクなどが適切ですが、食塩水(水1リットルに食塩2グラム程度)でも構いません。


意識がなかったり意識がはっきりしていない場合や、嘔吐や痙攣をおこしている場合は、上記の応急処置だけでは足りません。応急処置を施しながら救急車で病院に連れていきます。早急に適切な対応をするほど回復も早いはずです。

 

熱中症の予防

当たり前のことですが、熱中症にならないことが最善です。予防方法はそれほど難しいことではありません。知っていればできることばかりですので、熱中症にならないようにしましょう。

熱中症が起こりやすい条件を知る
①熱中症は高温多湿の日に起こりやすい。②風がなく気温が高いときにもなりやすいです。③雨上がりで急に気温が上がったときにも起こりやすいです。これらの条件のときには十分注意が必要です。梅雨の時期や夏には天気予報などでも呼びかけていますので、まずは気象条件をよく知ることから始めます。

水分をこまめに摂る習慣を
のどが渇いていなくても水分を補給するようにします。熱中症が起こりやすい条件のときには、のどが渇いたと感じてからでは遅いとされています。また、運動前や運動中の水分補給も欠かせません。高齢者の方はのどの渇きを感じにくいことがあります。定期的に水分補給することを心掛けましょう。

塩分を摂取する
汗をかくと水分と同時に塩分も体から出ていきます。その状態で水分だけを摂取し続けると、血液中のナトリウム濃度が下がってしまい、身体に不調がでてきます。塩分も一緒に摂取できるスポーツドリンクや食塩水、水と一緒に塩飴などをなめるのも効果的です。

体調が悪いときは無理をしない
寝不足であったりバテ気味のときには激しい運動は控えましょう。特に熱中症が起こりやすい条件のときは無理な外出などはせず、もしどうしてもの時は休憩を入れながら体調の変化に注意しましょう。
自分の体調を知ることも必要です。前日にお酒を飲み過ぎたりしたときは脱水ぎみになっている可能性があります。また、忙しいからといって朝食を抜いて外出や運動するのも注意が必要です。

熱中症にならない環境を作る
室内でも熱中症になることはあります。エアコンを上手に使って快適な環境で過ごすことも大切です。また、服装にも気を配ります。通気性の良い服を着たり、外出の際は帽子や日傘をするなど、簡単な暑さ対策でも効果があります。
冷却グッズなども効果的で、濡れタオルや保冷材などを首・わき・足の付け根などの血管の多い場所を冷やすと体温の上昇を抑えられます。

 

 

 

愛和クリニック 熱中症

 

 

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