間欠性跛行(歩くと足がいたくなり少し休むとまた歩ける)

間欠性跛行
歩き始めは何ともない → しばらくすると足にしびれや痛みが出る → 少し休むと → また歩ける

「少し歩くと足が痛くなったり、痺れが出て歩けなくなってしまう」そして「少し休むと再び歩けるようになる」こんな症状を”間欠性跛行”とよびます。
間欠性跛行は足が痛くなるのですが、原因が足の筋肉や骨、神経にあるとは限りません。足に原因がある場合は、「少し休むと歩けるよになる」ことはあまりありません。むしろ、足から離れた背骨や血管に原因があることが多いのです。
間欠性跛行の症状は原因によって治療法が異なるので、検査をしてしっかりと原因を見極めることが大切です。

 

 腰部脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症

間欠性跛行の症状が出る病気は3つ考えられます。
  1 腰部脊柱管狭窄症
  2 閉塞性動脈硬化症
  3 バージャー病
この中でも、「腰部脊柱管狭窄症」「閉塞性動脈硬化症」の鑑別が大切になります。
「バージャー病」は難病指定されていて、煙草を吸う20~40歳の男性に多い(男女比10対1)、手足の動脈の病気です。閉塞性血栓血管炎ともよばれ、動脈が炎症を起こし、血流障害によって放っておくと手足が壊死してしまうこともあります。症状や年齢層、喫煙歴などから比較的簡単に見分けられるので、このページでは「腰部脊柱管狭窄症」と「閉塞性動脈硬化症」について詳しくみていきます。

 

 腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

上の図は、腰の骨の部分を横からみたものです。左は正常な腰椎で、脊柱管はまっすぐにのびています。
ところが、年齢とともに骨が変形したり靭帯が肥厚したりすると、脊柱管が歪められて曲がったり狭くなったりしてしまいます。その状態が右の図です。脊柱管の中には「馬尾神経」という大きな神経が通っています。これが圧迫されると、腰痛や足の痛みや痺れが引き起こされます。
歩くことで、自然に腰にある脊柱管が圧迫されて狭くなっていき、痛みや痺れで歩けなくなります。ですが、休んで(特に前かがみになって)しばらくすると、脊柱管の圧迫が解消されてきます。すると再び歩けるようになるわけです。

 

 腰部脊柱管狭窄症の検査

問診では、間欠性跛行の状態や腰痛の有無、痛みや痺れの状態、糖尿病の有無(糖尿病の場合は閉塞性動脈硬化症の可能性が高い)などを聞き取りします。
次に腰(腰椎)のレントゲンを撮影し、腰の骨の変形や、ヘルニアの有無、骨と骨がずれていないか、骨と骨の間が狭くなっていないかなどを調べます。
閉塞性動脈硬化症との鑑別に注意しながら診察をすすめていき、問診やレントゲンで判断がつきにくい場合は腰部のMRIで診断します。

 

 腰部脊柱管狭窄症の治療

治療には、薬物療法(内服薬や外用薬)、理学療法(低周波療法や電気による神経刺激療法、微弱電流療法など)、自分で行うストレッチや骨を支える筋肉の増強など、多種多様な治療法があります。これらの保存的治療がメインですが、どうしても改善しない場合は手術も考慮します。当クリニックでは、薬物療法、理学療法 →→電流刺激装置など←← 、ストレッチなどの運動・生活指導を行っております。

 

 閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは、足の血管の動脈硬化がすすみ、血管が細くなったり詰まったりして、血液の流れが悪くなる病気です。
それが原因で様々な症状が現れます。歩行時の痛みや痺れ、冷感などが現れ、さらにすすむと安静時でもこういった症状がでます。
動脈硬化の原因は主に生活習慣病で、糖尿病をはじめ、高血圧症、高脂血症、メタボリックシンドローム、喫煙などがあげられます。
閉塞性動脈硬化症は足に痛みや痺れ、冷感などが現れて発見されますが、足だけの問題ではありません。足で動脈硬化が起こっているのであれば、全身のどこで起こっていても不思議ではありません。脳で閉塞が起これば脳梗塞につながり、心臓で閉塞が起これば心筋梗塞につながります。大きな血管で動脈瘤や動脈解離なども引き起こす可能性があります。全身性の疾患であることに注意が必要なのです。

 

 閉塞性動脈硬化症の検査

問診では腰部脊柱管狭窄症と同様、間欠性跛行の状態やその他の症状についての詳しい聞き取りをします。閉塞性動脈硬化症は生活習慣病と関わりが深いので、糖尿病をはじめ、生活習慣病の聞き取りからその診断のための検査もすることがあります。
また、四肢の動脈の触診を行います。閉塞性動脈硬化症では閉塞部位より先の動脈の触知が減弱していることがあります。また、皮膚の温度も触診でわかることもあります。閉塞している側の足の温度が下がって左右差がある場合は閉塞性動脈硬化症を強く疑います。
次に足関節上腕血圧比検査(ABI検査)があります。両腕両足の血圧を測定して比較することで動脈閉塞や動脈硬化の評価が出来る機械があります。→→血圧脈波検査←← この検査は閉塞性動脈硬化症の客観的診断や重症度の評価に有用とされています。
画像検査も有効です。超音波で血管径を調べたり、狭窄部位と非狭窄部位の比較、血流の状態もわかります。→→超音波検査←← 
また、血管造影CTやMR血管造影などで血管の状態を立体的に調べたりもします。

 

 閉塞性動脈硬化症の治療

閉塞性動脈硬化症の治療は重症度によって異なってくるのですが、血流不足になって運動が制限されたことによる生活の質(QOL)の改善を目指します。
まずは、動脈硬化の危険因子の排除です。生活習慣病(高血圧や糖尿病、脂質異常症など)の管理をします。喫煙が動脈硬化を悪化させることは医学的に証明されているので、禁煙が基本です。
それに加えて運動療法で血流不足となった足への血流を増やすことを目指します。有酸素運動を行うことで生活習慣病も改善されていくので、この運動療法は欠かせません。(急に激しい運動は勧められませんので医師の指導のもとで行います)
薬物療法も行われます。足へ向かう血流を増やして症状を改善させることと、脳や心臓の血流も改善させる目的で、抗血小板薬や血管拡張薬などが使われます。
それでも十分な効果が得られない場合は、手術も考慮されます。血行再建術として、カテーテル治療やバイパス手術などがあります。狭くなったり詰まったりしている血管にカテーテルを操作して血行をよくするとか、ステント(金網を円筒にしたもの)を狭くなった血管に固定して血流を確保する方法がとられます。

 

 間欠性跛行のまとめ

間欠性跛行の原因で見極めが重要なのは「腰部脊柱管狭窄症」と「閉塞性動脈硬化症」です。
両者の鑑別診断は、医師が複数の検査結果をもとに診断します。
この2つの疾患は治療法がことなります。
「腰部脊柱管狭窄症」と「閉塞性動脈硬化症」の両方を患っていることもありますので注意が必要です。

 

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