愛和クリニック インフルエンザ

 インフルエンザと風邪の違い

<インフルエンザの症状について>

インフルエンザの主な症状の特徴としては、突然の38℃以上の発熱があり、鼻水や咳、頭痛、筋肉痛など、風邪に比べてとても強い全身症状が現れます。

<風邪の症状について>

一般的な風邪の症状については、インフルエンザほどの強い全身症状はあまりみられません。鼻水鼻づまり、咳や喉の痛みや発熱といった、いわゆる鼻や喉の周辺の上気道の炎症の総称とされています。

<原因と症状の比較>

インフルエンザは「インフルエンザウイルス」が原因の感染症です。それに対して風邪は「ライノウイルス」「コロナウイルス」「アデノウイルス」など様々なウイルスが原因になります。
インフルエンザに感染すると、1日から5日程度の潜伏期間を経て(2日前後が最も多い)、高熱や悪寒、関節痛、筋肉痛、頭痛などの全身症状が何の前触れもなく突然現れるのが特徴です。
風邪でも発熱などの症状が現れることもありますが、インフルエンザほど高熱になることは稀です。また風邪は、咳や痰、鼻水などの症状から発症することが多いです。
インフルエンザでも咳や鼻水などの症状から発症することがありますが、これは風邪とインフルエンザの合併症からくるものだと考えられています。その後すぐに、高熱やつらい関節痛などの重い症状が続きます。

 

 インフルエンザの症状の経過

繰り返しになりますが、インフルエンザは「インフルエンザウイルス」に感染することによって起こる病気です。風邪よりも急激に発症し、症状が重いのが特徴です。
感染後、1~7日(多くは2日前後)の潜伏期間のあと、38℃以上の高熱や筋肉痛などの重い全身症状が現れます。普段、健康状態がいい人であれば、その症状が3日間から7日間続いたあと、治癒に向かいます。ただ、子供や高齢者、基礎疾患がある方などは免疫力が弱く、気管支炎や肺炎を併発する恐れもあります。また、対応を誤ると脳炎や心不全になる場合もあります。

インフルエンザウイルスには強力な感染力があり、いったん流行すると年齢や性別を問わず、短期間で多くの人に感染が広がります。インフルエンザにかかってしまったら、早めに病院に受診することはもちろんですが、周囲の人にうつさないように配慮することが大切です。

 

 インフルエンザにかかってしまったら

<医療機関への受診>

病院で処方される抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に服用しないと効果が出にくくなります。これはインフルエンザウイルスが活発になって、増殖のピークが48時間以内だからだといわれます。薬でインフルエンザウイルスの増殖を抑え、感染の拡大を防ぐためにも、速やかな受診と薬の服用が大切です。

<自分ですること>

①できるだけ安静にして、栄養と十分な睡眠をとります。自分の身体の抵抗力、免疫力を高めることが重要です。
②インフルエンザウイルスの空気中での活動や感染を抑えるために、加湿器などで部屋の湿度を50~60%に保ちます。
③脱水症状になりやすいので、それを防ぐために十分な水分補給をします。

<注意すること>

インフルエンザは急激な症状、重い症状であることが一般的ですが、稀に37℃前後の微熱が続いているという方でもインフルエンザウイルスが検出されることがあります。また、39℃の熱が続いている方でもインフルエンザウイルスが検出されないこともあります。一般的に病院での検査は簡易キットですので、診断は100%ではありません。それを補うために重要なのが「医師による問診」です。どんな症状がいつから現れたか、周りにインフルエンザにかかった人がいるか、いつもの風邪と違う症状がないか、その他に身体の不調はないか(胃腸症状などが出る場合もあります)、など、できるだけ詳しくお話ししましょう。
また、市販薬を使う場合にも注意が必要です。インフルエンザでは高熱が出たり、関節痛や筋肉痛があるので、解熱鎮痛剤を服用しがちですが、インフルエンザのときに使ってはいけない解熱鎮痛剤があります。サリチル酸系のアスピリンやエテンザミドなどがそうです。これらはインフルエンザ脳症を引き起こす恐れがあります。インフルエンザウイルスが脳の内部まで侵入することで発症します。意識障害・けいれん・異常行動・各種臓器不全などの症状がでます。
安易に市販薬で対処するのはおすすめできません。

 

 インフルエンザの予防

<インフルエンザワクチンの接種>

インフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザの発症を抑え、合併症や重症化を防ぐという効果があります。
ワクチンは接種後すぐに効果が得られるわけではなく、個人差はありますが通常は接種後2週間で抗体ができます。効果は5ヵ月程度続きますので、流行する前に接種することが有効です。 ※詳細は後述します

<部屋の空気の乾燥に気をつける>

人の喉は乾燥にとても弱いものです。適切な湿度があると喉の粘膜がウイルスの侵入を防いでくれるのですが、乾燥してしまうと喉の粘膜が荒れてしまって、簡単にウイルスの侵入を許してしまうのです。
乾燥した部屋にいるとインフルエンザウイルスに感染しやすくなるとともに、空気感染も起こしやすくなります。加湿器などを使って湿度を適切に保ちましょう。湿度の目安は50%~60%がいいとされています。

<休養とバランスのとれた栄養を摂る>

身体の抵抗力や免疫力を高めるために十分な休養とバランスのとれた栄養の摂取を心掛けましょう。身体が疲れていたり、必要な栄養が足りない状態のときはインフルエンザに感染しやすくなっています。

<人ごみを避ける>

インフルエンザが流行してきたら、特に高齢者や基礎疾患のある方、妊婦、疲れが溜まっている方、睡眠不足の方は人ごみを避けるのもひとつの方法です。人ごみでは、どうしても大勢の人と接触しますので、飛沫感染、接触感染、空気感染のリスクが高まります。

<外出後の手洗い>

流水かつ石鹸で手洗いすることはインフルエンザウイルスを物理的に除去するには有効な手段です。外出時についたウイルスを家に持ち込まないために洗い流すことは大切です。また、インフルエンザウイルスに対してはアルコールによる消毒も効果がありますので、アルコール製剤による手指の洗浄も効果的です。

<うがいは効果が薄い?>

昔から「うがい」は風邪予防として行われていますが、近年の研究でインフルエンザの予防には効果が薄いということがわかりました。うがいは、口や喉の粘膜に付着した菌やウイルスを洗い流すのは確かなことですが、インフルエンザウイルスは付着して20分程度で粘膜から細胞へと入り込んでしまうのです。ですので、20分おきにうがいをするなら効果ありですが、それ以上経つと意味がなくなってしまうのです。
それよりも、こまめに水を飲んで粘膜を潤し、気道粘膜のもっている異物侵入を防ぐ働きを最大限に発揮してあげたほうが効果的ということになります。

<マスクについて>

マスクをすることでインフルエンザを予防できると考えている人も多いのではないでしょうか?しかし残念ながらマスクもインフルエンザウイルスの侵入を防ぐという点ではあまり効果が期待できません。インフルエンザウイルスは非常に微細な粒子であるため、通常のマスクではすり抜けて侵入していまいます。現在では非常に目の細かいマスクも販売されていますが、かなり高価なものです。そして、使いかたも隙間がなくなるようにしっかり装着しなくては意味がありません。
しかし、マスクの効果はインフルエンザウイルスの侵入を防ぐこと以外にあります。
マスクは咳やくしゃみをしたとき、唾や痰などは通しませんので、他人にうつさないという点で役立ちます。これは非常に重要なことで、感染拡大を起こさないこと、また、感染・発症してしまってもお薬を飲めない妊婦さんなどや、高齢者のように体力がなく重症化しやすい方を守ることにつながります。インフルエンザに限らず、咳やくしゃみが出る風邪でも、罹ってしまった場合はマスクをすることは必要最低限のマナーだと思ってください。
ウイルスの侵入以外でマスクのいいところは、鼻や口、喉の粘膜の保湿ができるということもあります。粘膜は乾燥すると働きが鈍くなってしまいますので、この点では有効だと言えます。

 

 インフルエンザの予防接種

<はじめに>

「インフルエンザの予防接種は意味がないって聞いた」など、疑問を持っている方はいませんか?しかしこれは恐らく、医療統計学を知らない人が発言したことに尾ひれがついたり、間違った新聞等の記事を鵜呑みにしてしまっているせいだと思われます。例えば、ワクチンの有効率が60%とすると、100人接種したら60人の人がインフルエンザに罹らないと考えがちですが、これは医療統計学では間違いです。計算方法はここでは詳しく書きませんが、有効率60%というのは、ワクチンを接種しない人は、接種した人に比べて、2.5倍程度、感染のリスクが高まるのです。平成11年の「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」で、65歳以上の老人福祉施設・病院に入所している高齢者について、34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったと発表されています。
ワクチンを接種すれば100%罹患しないわけではありませんが、ある一定の発病を阻止する効果があり、たとえ罹ってしまったとしても、重症化を防ぐ効果も認められているのがインフルエンザワクチンなのです。

<インフルエンザワクチンの効果>

インフルエンザには、感染と発症というプロセスがあります。
ウイルスが口や鼻から体内に侵入します。そしてそのウイルスが粘膜から細胞に侵入して増殖します。これが「感染」です。
そして、1日~5日程度の潜伏期間ののち、発熱や関節痛などの症状が出ます。これが「発症」です。
インフルエンザワクチンは、ここで言う「感染」を予防することはできません。ワクチンは「発症」を抑え、合併症や重症化などのリスクを防ぐ効果が認められています。
インフルエンザワクチンの効果が発揮されるまで(抗体ができるまで)には2週間程度かかります。また、その効果は5ヵ月ほど続きますので、流行する前に接種しておくとよいでしょう。

<インフルエンザワクチンの副反応>

どんなに優れたお薬でも期待する効果以外に副作用や副反応というものはあります。それはワクチンでも同じで、免疫をつけるという効果以外の副反応が出る場合があります。気になる場合は医師に相談しましょう。

①接種した場所に起こる副反応で、注射をした部分が赤くなる、腫れる、硬くなる、熱を持つ、痛くなる、といったことがあります。10~20%の人に起こりますが、2、3日で消失します。
②全身症状として、熱が出る、悪寒、頭痛、吐き気、倦怠感、リンパの腫れなどが5~10%の人で起こることがあります。これも通常は2,3日で治まります。

以下、非常に稀な副反応です。
③アナフィラキシー症状・・・非常に強いアレルギー反応のことで、蕁麻疹や喉の腫れ、呼吸困難、アナフィラキシーショックで血圧低下や意識障害などが起こることがあります。
④その他・・・ギランバレー症候群、急性脳症、肝機能障害、喘息発作、血症減少性紫斑病、等が厚生労働省から報告があります。

※ アレルギー症状やアナフィラキシー症状は、接種後、比較的短時間で現れることが多いので、接種したら30分くらいは病院で様子をみたり、すぐに病院と連絡が取れるようにしておくとよいでしょう。

<予防接種を受けることが出来ない人>

インフルエンザの予防接種を受ける前に問診票や医師の診察がありますが、これは非常に重要なことです。体調面や現病歴、既往歴などによっては予防接種を受けることが出来ない人もいます。接種することで本来のメリットよりも副反応や予期できない症状などが発現し、デメリットのほうが大きい人もいるからです。これに該当しないかどうかを確かめるための問診票や診察ですので、受ける側の人も注意深く回答することが大切です。

  

以下に当てはまる方は予防接種を受けることができません。

明らかに発熱がある人(通常は37.5℃以上)
重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな人(急性疾患が治るまで見送ること)
過去に予防接種を受けてアナフラキシーショックを起こしたことがある人、または、他の医薬品を使用してアナフィラキシーショックを起こしたことがある人
その他、医師の診察で予防接種を受けることが不適当と判断された人

  

以下に当てはまる方は予防接種を受ける前に医師とよく相談しましょう

心臓病や腎臓病、肝臓や血液、その他の慢性的な病気がある人
発育が遅く、医師や保健師の指導を受けている人
風邪のひき始めのような症状がある人
過去に予防接種を受け、2日以内にアレルギー反応(発熱・発疹・蕁麻疹など)が出たことがある人
鶏卵、鶏肉などの食事で発疹や体の異常を感じたことがある人
過去に痙攣の既往歴がある人
過去に免疫不全または免疫異常を指摘されたことがある人
気管支喘息がある人
妊婦、または妊娠の可能性がある人

 

<予防接種を受けた後>

予防接種を受けた後の30分程度は、安静にして医療機関に留まるか、すぐに医師と連絡が取れるようにしておきましょう。これは急な副反応(アナフィラキシーショックなど)が起こった場合に備えてのことです。
入浴をすることは問題ありません。ただ、注射した部位をこするのは控えてください。
予防接種を受けた当日は、注射した部位を清潔に保ちましょう。普段の生活で構いませんが、激しい運動や大量の飲酒は控えましょう。
インフルエンザ予防接種の副反応は、ほとんどが24時間以内に発現します。もし発熱や痙攣など、副反応と思われる症状が出た場合には、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。

 

<インフルエンザの予防接種を受けようとする方へ>

インフルエンザワクチンの効果や副反応、注意事項については上のとおりです。予防接種は自分自身の発症リスクを下げるだけでなく、感染拡大を防ぐという意味でも大切なことです。
副反応が気になる方もいますでしょうが、重篤な副反応はごく稀にしか現れませんので、過剰な心配は必要ありません。ただ、万が一のときに素早く対応できるよう知識として知っていてください。

 

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