メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームという言葉は聞いたことがあると思います。特定健康診査(メタボ健診)とういメタボリックシンドロームに特化した健康診断もあり、近年、国をあげて対策しているいわゆる「メタボ」。
ただ太っているとか、見た目だけで「メタボ」という言葉を使っている方もみられますが、もちろん、そうではありません。メタボ状態は「心筋梗塞」や「脳卒中」のリスクの高い状態だということをしっかり理解しておくことは大切なことです。ちなみに、「心筋梗塞」と「脳卒中」と「悪性腫瘍」は日本人の三大死因といわれてきました(平成23年に「肺炎」が3位に脳卒中が4位になりました)。

 メタボリックシンドロームとは?

「内臓脂肪症候群」とも呼ばれていて、”複数の病気や異常が重なり合っている状態”だと考えてください。
どういう事かというというと、腸の周りやお腹の中の部分にたまる「内臓脂肪の蓄積」によって、高血圧症や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の重なりが起こっている状態を示しています。この状態は、「動脈硬化」を急速に進行させてしまいます。
「動脈硬化」は「心筋梗塞」や「脳卒中」の最大の原因と言えます。それぞれの状態は軽症だったり予備軍だったりでも(例えば、軽い高血圧だとか、糖尿病予備軍だとか)、複数が重なり合っていた場合、動脈硬化の進行という観点から言えば、”すぐに手を打たなければならない”状態と考える必要があるということです。
これが「メタボリックシンドローム」の考え方なのです。

 2つの肥満のタイプ

愛和クリニック

上のような画像を見たことがあるでしょうか?これは人のお腹をCTで輪切りにして足側から見ている画像です。
外側にある薄いピンク色の部分が皮下脂肪、内側の濃いピンク色の部分が内臓脂肪です。
比較してみると、左側の画像では、薄いピンクの部分よりも、濃いピンクの部分が目立って多くみえます。逆に、右側の画像では、濃いピンクの部分よりも、薄いピンクの部分のほうが多くみえます。
これが肥満の2つのタイプの違いで、左の画像が「内臓脂肪型肥満」で、右の画像が「皮下脂肪型肥満」のCT画像です。
メタボリックシンドロームで問題となるのは、「内臓脂肪型肥満」です。こうしたCT画像で内臓脂肪の面積を測定して、100㎠以上を「内臓脂肪型肥満」と定義しています。

メタボリックシンドロームの診断基準

メタボリックシンドロームかどうかの診断の基本は、腹囲(ウエストサイズ)です。腹囲は内臓脂肪の蓄積状態を知る目安になるからです。

1 内臓脂肪型肥満 腹囲(へそまわりのウエスト)  男性 85cm以上  女性 90cm以上
2 中性脂肪・
   HDL-コレステロール
中性脂肪値 150mg/dl以上
HDL-コレステロール値 40mg/dl未満 (いづれか又は両方)
3 血圧 収縮期血圧(最高血圧) 130mmHg以上
拡張期血圧(最低血圧)   85mmHg以上 (いづれか又は両方)
4 血糖値 空腹時血糖 110mg/dl以上

診断基準の腹囲に関しての基準は、内臓脂肪面積が100㎠に相当するウエストサイズです。簡単に測れるものです。
ですが、個人差があります。腹囲が基準値以下であっても内臓脂肪面積が100㎠以上の人がいないわけではありません。正確な面積はCTスキャンで測定します。特に他の項目が複数基準値以上の方は、定期的にCTスキャンをおすすめします。
※愛和クリニックでは内臓脂肪面積のCTスキャン測定を行っております。→→CTスキャン←←

 検査値が異常だったら?!

中性脂肪・HDL-コレステロールの高値(脂質異常症)、高血圧症、糖尿病は頻度の高い生活習慣病であり、内臓脂肪型肥満の方でなくとも、複数の異常が重なって起きていることも当然あり得ます。その場合は、それぞれの検査値異常の原因を調べ、医師による適切な指導や治療が必要になります。
検査値異常が複数あり、なおかつ内臓脂肪型肥満であってメタボリックシンドロームと診断された場合は、その根底にある内臓脂肪を減らすことが最も重要となります。栄養過多や運動不足によって蓄積された内臓脂肪を減らすことで、その他の検査値異常が劇的に改善する可能性もあります。もちろん、医師による指導のもとで行うことも重要です。

 食事を見直す

内臓脂肪型肥満・脂質異常・高血圧・糖尿病は、主に食べ過ぎや飲み過ぎによるカロリー摂取過多によって発症していることが多いです。自分では普通だと思っていても、年齢とともに基礎代謝が減って以前よりもエネルギーが消費できていないことがあります。さらに現代では洋食中心の高カロリーな食べ物が増えているのも事実で、これが内臓脂肪の蓄積につながります。
まず、しっかりとカロリーを考えて食事を摂ること。そして「腹八分目」が基本となります。
洋食よりも和食のほうが野菜もたくさん使っているものが多く、カロリーが低めなので和食中心にするのもいいと思います。野菜には抗酸化作用を持つ成分が多いので、血管の老化を防ぎ、動脈硬化の防止になります。

~ 自分に合ったメニューを ~
当然のことながら、カロリーだけを制限すればいいというわけではありません。自分の症状に応じて注意することがあります。
 1 血圧が高い方は、塩分の摂り過ぎに注意
 2 血糖値が高い方は、全体のカロリーを控え、甘いものや間食を控える
 3 中性脂肪が高めなら、食べ過ぎや早食い、揚げ物を控えるなど
 4 LDL-コレステロールが高いなら、コレステロールの高い食べ物を控える
など、注意したいことはたくさんあります。できれば医師や栄養士などのアドバイスや指導のもとで行いたいものです。

 生活習慣を見直す

内臓脂肪型肥満を含め、高血圧や脂質異常症、糖尿病は”生活習慣病”と呼ばれるくらいなので、当然、生活習慣を見直すことが必要です。特に、肥満の方はほとんど運動をしていないケースが多いです。

~ 医師に相談してから運動を開始 ~
メタボリックシンドロームの場合、すでに動脈硬化を起こしている可能性もあるため、いきなり運動を始めると余計に危険な場合があります。必ず医師に相談してから始めましょう。

~ 有酸素運動 ~
内臓脂肪を減らすには、有酸素運動が基本になります。ウォーキング、水中ウォーキング、ジョギング、自転車こぎなどがあります。これらはダイエットなどでもよく行われていますが、内臓脂肪は皮下脂肪よりも燃焼しやすいので、目に見えて効果が現れたときには、内臓脂肪はもっと減っていると思われます。そう思えばやりがいもあるのではないでしょうか?
注意点は、軽めの運動から少しずつ始めること。キツイ運動ですぐに嫌になってしまうのを避けるためでもありますが、やはり一番の理由は危険があるからです。心臓や血管が弱っているところに、急激な負荷がかかると、思わぬ病気を引き起こしてしまうことがあるからです。
軽い、短時間の有酸素運動でもいいので、毎日・長~く続けることが大切です。

~ たばこをやめる ~
喫煙は血管を収縮させ、活性酸素を増やし、動脈硬化を促進する原因になることは証明されています。メタボリックシンドロームを悪化させる要因のひとつには違いないので、たばこは控えるか、できれば止めることをお勧めします。
※愛和クリニックでは禁煙外来を行っております。→→詳しくはこちら←←

~ 日常のストレスを減らす ~
人にはストレスは必要なものです。ですが、現代ではそのストレスが大きくなりすぎてバランスがとれなくなってしまうことが多くなっています。メタボリックシンドロームにはどう悪いのかというと、ストレスを感じると、血管が収縮します。血圧が上がってしまうのと、血管自体にもダメージをあたえます。それと、ストレスで食べ過ぎや飲み過ぎを引き起こすということ。これはもちろん、内臓脂肪型肥満の原因だけでなく、生活習慣病全般に悪いのは言うまでもありません。
ストレスを全く感じないということは絶対に無理でしょうが、ストレスがたまらないように工夫を考えましょう。ストレスを感じたりストレスが溜まってきたなと感じたとき、「これをすればリラックスできる・ストレスが吹き飛ぶ」といったものがひとつあるだけで楽になるものです。

 

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